選手のコンディショニングの流れ

ゴールデンウィークに入りましたね。

去年に引き続き、3回目の緊急事態宣言が出ているため、どこにも出かける予定はありません。

そんな中、選手のサポートはありがたいことに継続させていただいています。

今回は、選手のコンディショニング(ケア)を行う流れをご紹介します。

コンディショニングの目的

選手をコンディショニングする目的としては、日々のトレーニングの疲労を取ること、微細な炎症によるスカーティッシュを取り除き、関節や筋肉本来の動きを取り戻すことがメインになります。

基本的には通常のコンディションの状態がプラスマイナスゼロの状態だとすると、疲労やスカーティッシュの蓄積により、シーズン中はマイナスになっていることが多いため、コンディションをなるべくゼロに戻すことがメインになります。

現状、選手の自宅でコンディショニングを行っているため、エクササイズのようなものはほとんどできていません。

シーズン開始前に、マット上でできる体幹トレーニングは行ったことがありますが、練習後で疲労していることが多いため、上記のようなマイナスをまずはゼロのフラットな状態に少しでも近づけるようなアプローチが中心になります。

もちろん、どこかを痛めていることも少なくなく、その時その時に本人の気になる症状を取って、ストレスなく次のトレーニングに向かえる状態を目指します。

コンディショニングの流れ

状態の確認

選手のお宅にお邪魔して、まずその日の調子を聞きます。

そうすると、本人から気になる部位や症状を言ってくれるので、それについてのヒアリングから始めます。

そして、前回気にしていた部位や症状がどう経過しているか、あるいは前回私自身が気になっていたことなど、その後トレーニングで動いてみての変化や症状に関してヒアリングします。

そして、コンディショニングを通してですが、最近のメンタル面の状態やチーム状況など、何気ない会話の中から、コンディショニングに関するヒントがないか、気にしながら会話していきます。

日によっては、疲労が強く、眠そうにしていることもあるので、そういう場合は、あまり話しかけず、少し寝させてあげて、触ったり、押したり、ストレッチしたりしたときの表情の変化などで状態を探りながら、コンディショニングしていきます。

コンディショニングの開始

実際にコンディショニングを始めていきます。

一番気になっている部分のチェック

まずは、先ほど聞いた今一番気になっているという部位や症状をチェックしていきます。

1か所のこともあれば、複数か所の場合もあります。

痛みがあるのであれば、どうしたときにその痛みがでるのか。

可動域はどうか、

筋力発揮は可能か、

筋力は左右差ないか、

動作での痛みはどうか、

など、痛みであれば、どの部位のどの組織がどうなっているのか、ということを推測しながら、痛みの原因や状態を追求していきます。

その場でその痛みを改善できることもあれば、病態によってはすぎに改善できないものもあります。

そういう場合は、その病態に関して、チェックでわかったことを伝え、症状がよくなるまでどの程度かかりそうか、今後どのようなアプローチが必要かなど、説明します。

具体的に損傷がある場合などはその部位には触らず、周りが無意識に安静にさせようと固めてしまうことが多いので、無駄に固めることで痛みを助長したり、長引くことが多いので、周囲の硬さや可動域を改善することを行います。

そうすることで、患部を触らなくても、症状が改善する場合が少なくありません。

仰向け

ここからは、比較的ルーティンで各部位の状態を確認しながら、主にスカーティッシュが溜まっていないか、を確認しながら、可動域や筋の滑走など、アプローチしていきます。

足部・足関節

まずは足部、足関節から。

サッカー選手はキック動作はもちろんのこと、激しいターンやストップ動作、ジャンプ動作が多く、足関節回りにスカーティッシュが溜まりやすいので、まずは足首周りからアプローチします。

背屈が硬くなりやすいので、背屈可動域を膝伸展位と膝屈曲位で確認し、距骨の動きやアキレス腱周囲、足根骨動詞の動きが出ているかどうか、チェックしながら、動きを出していきます。

足根骨、距骨、脛腓関節、腓骨周囲を主にアプローチしていきます。

膝周囲

膝周りに関しては、屈曲と伸展の可動域はどうかというところを確認します。

選手によっては度重なる怪我で骨や関節が変形していて、可動域制限があり、その場合は入念に関節回りのスカーティッシュの除去や膝の近くにある筋肉やお皿の動きなど、細かくチェック・アプローチしてこまめに可動域がどう変化するかを確認しながら進めていきます。

あまり可動域が変わっていない場合でも選手が感じる最終域感が劇的に変わることもあり、選手の反応もチェックするポイントの一つです。

股関節

股関節も特に積極的にアプローチする箇所の一つです。

特にサッカーはキック動作で股関節や鼡径部に大きなストレスがかかります。

あるいはスプリントで可動域をいっぱいに使って大きな筋力発揮や地面反力によってもストレスがかかります。

そのような衝撃やストレスは小さな炎症を引き起こし、炎症の蓄積によるスカーティッシュが溜まりやすいところです。

可動域を確認しながら、股関節を上下左右前後に動かしながら、動きが悪い方向がないか、可動域がせまい動きはないか、など確認しながら、時間をかけてケアしていきます。

股関節は人体の中でも大きな関節で、多方向への動きが可能な関節です。

股関節の動きが悪いと、膝や腰に負担をかけることになりかねないので、しっかりとコンディショニングしていきます。

また、ここでハムストリングスの状態も確認します。

普通はうつ伏せでアプローチすることが一般的かもしれませんが、私の場合は仰向けで行うことが多いです。

アプローチした後にすぐにSLRでストレッチの状態を確認できるので、何が問題なのかをすぐに確認できるためです。

特に坐骨結節周囲へのアプローチも仰向けの方がやりやすいと思います。

また、腰痛症状が出やすい選手に関しては、腸腰筋や腹部の硬さに対しても仰向けでアプローチしていきます。

うつ伏せ

股関節が終わるとうつ伏せになって、また下からアプローチしていきます。

下肢後面

うつ伏せになったら、片方の膝を90°に屈曲させて、足の裏や足関節の可動域、アキレス腱周囲、腓骨周囲、膝窩筋の硬さ、内側・外側ハムの滑走、外側広筋の硬さ、坐骨周囲という流れでチェックしながらアプローチしていきます。

特に腓骨の動き、膝窩筋、内側・外側ハムの滑走など、うつ伏せでしかできないアプローチが中心です。

そして、うつ伏せで股関節を軽度外旋させて、外側広筋の硬さは意外とポイントです。

ハムの症状や肉離れしやすい選手は硬い選手が多いです。

外側広筋は予想以上に外側の後方まで位置しており、外側ハムと隣り合わせの位置にあります。

そのため、外側広筋が硬くなると、筋膜レベルで隣の外側ハムを引っ張ることになり、外側ハムの収縮や滑走の邪魔をすることになるのです。

したがって、外側広筋の硬さへのアプローチも忘れずに行います。

仙腸関節

股関節と同じくらい、スカーティッシュが溜まりやすい部位として、仙腸関節付近があります。

仙腸関節はそもそもほとんど可動域はありませんが、ほんの数ミリでも動くか動かないかでかなりの違いが生まれます。

うつ伏せで膝屈曲、したり股関節伸展したりしたときに腰部や仙腸関節に響くような症状や痛みがある場合、たいていは仙腸関節にアプローチするとその症状や痛みはすぐに取れます。

また、仙腸関節だけではなく、腸骨稜の際に沿ってや第5腰椎と仙骨の動きも出していくと腰に余裕ができ、腰痛の選手は楽になることが多いです。

さらに仙骨外下方に行くと梨状筋があります。

この仙骨の際の部分もスカーティッシュが溜まりやすく、坐骨神経の症状が出やすい選手にはアプローチが必要です。

そして仙骨から坐骨結節につながる靭帯の硬さは坐骨の動きに影響するため、坐骨を介してハムストリングスにも影響を及ぼします。

そのあたりもアプローチしていきます。

腰背部

そして最後に腰背部。

腰椎の回旋の動きを出しながら、腰部の緊張を落としていき、さらには肋椎関節の動きを出していき、胸郭の可動性も出していきます。

サッカー選手は上半身の柔軟性に対して、無頓着なこともあり、胸郭や鎖骨の動きが悪いことも少なくありません。

この辺へのチェックとアプローチも忘れずにしておきたいところです。

脊柱起立筋が硬いと感じたときは最後に仰向けで脊柱起立筋のストレッチも行います。

横向き(状態に応じて)

毎回ではありませんが、横向きでもアプローチする場合があります。

特に胸郭が硬い場合や、腰痛が上から来ていると推測される場合は横向きで胸郭の可動性を出したり、鎖骨の動きを出すことで肩や肩甲骨の可動域を改善します。

胸郭や鎖骨の動きが硬くなっている場合は劇的に可動域が改善することもあるので、やっていて達成感が味わえます。

ただ、鎖骨周辺は結構やられている選手は痛いので、時々確認程度でやることが多いです。

あとは、それを維持してもらえるようにセルフでのストレッチや体操を教えて、また痛い思いをしないでいいように配慮しています。

状態確認

最後に、全体的な状態の確認です。

一番気になる部位も含めて、コンディショニングする前と比べて変化したかどうかをお互いに確認していきます。

全ての症状がなくなることはないですが、なるべくゼロの状態に戻せるように心がけてコンディショニングしています。

まとめ

以上のような流れで選手に対するアプローチを行っています。

もっとやった方がいいところや、アプローチがあるかもしれませんが、現時点では上記のような流れと視点でアプローチしています。

私自身もまだまだ勉強しながら、日々選手の体を触りながら、経験値を上げさせてもらっています。

選手は体のコンディションだけでなく、メンバーに入るか入らないか、試合に出るか出ないか、怪我でリハビリ中か否か、あるいはそれ以外のことで、いろいろと悩んだり、試行錯誤したりとメンタルのコンディショニングも大変な職業です。

監督との合う合わないもありますしね。

しかし、常にベストパフォーマンスを出していかなければ、試合にも出られないし、評価もされないという過酷な世界です。

いわゆる結果が全てです。

少しでもコンディションを100%に近づけるお手伝いが出来るように私も日々研鑽して、選手と向き合うように、また気を引き締めていきたいと思います。

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