「膝が伸びない」と困っている選手へー自分でできるアプローチー

膝の手術をして、しばらくした選手つまりベテラン選手に多いのですが、膝が伸びにくくなってしまっている選手を時々見かけます。

基本的には治療の専門家に見てもらうのが一番ですが、自分でもできるアプローチを紹介したいと思います。

膝の伸展制限を取るべき理由

膝が伸びにくくなると何がよくないのか。

普通伸びるものなので、よくないのはわかるけど、何でよくないのか。

その理由を考えていきましょう。

地面をうまく蹴ることができなくなる

まず1つ目は、地面をうまく蹴ることができなくなります

下半身はトリプルエクステンションと言って、股関節、膝関節、足関節の3つの関節で地面を強く蹴ることができます。

そのうち、膝関節が伸びきらないと膝を伸ばす力を全て伝えることが出来ません。

したがって、せっかくの筋力が無駄になってしまう恐れがあるのです。

逆の膝への負担も増大する

膝が伸びない状態でずっといると、まっすぐ両脚で立ったときに、良い膝は伸びて、伸びない膝の方は少し曲がったままになりますよね。

そうすると、体が傾いてしまうので、無意識に良い方の膝が伸びない方の膝の角度に合わせて少し曲がった状態でいたり、伸びきらない膝で地面に伝えきれなかった力を良い方の膝の力で補ったりと逆の膝への負担が増大してしまいます。

逆の膝だけではなく、弱くなった地面を蹴る力をどうにか補おうとして、膝の上下の関節(つまり股関節と足関節)で補うケースも出てきます。

あるいは、シチュエーションによっては、伝わる力が弱いため、本来持っている筋力以上の筋発揮を要求されたりと、いろいろと問題が発生してくることが予想されます。

まっすぐ立てなくなる

あと単純にまっすぐ立てなくなります

これは先ほど挙げた例ですが、伸びきらない膝の角度に合わせて良い方の膝を曲げて調整するので、気を付けの姿勢ができなくなってしまいます。

引退してしまった選手ですが、まっすぐ立とうとすると必ず片方の膝が曲がっている人が身近にいます。身長測定の時にちゃんと膝伸ばしてください!といつも言われるそうです。(^_^;)

微妙に重心の位置も取りづらかったり、そもそもの重心の位置が変わってくる場合もあります。

そうすると、効率のよい動作もできなくなって、疲れやすくなったり、余計な筋の張りが出てきたりする場合もあります。

膝の伸展制限の原因

では、膝が伸びない原因は何なのかというと、大きく3つが考えられます。

構造物(骨や半月板)の変形

まず一つ目は骨や半月板など器質的構造物の破綻や変形による伸展制限です。

これは正直どうしようもないケースが多いです。

昔、半月板や前十字靭帯の手術をして、その後スポーツ活動で軟骨への刺激が繰り返し起こって変形が進んでしまったいわゆる変形性膝関節症という状態になってしまったケース。

このケースは実際に何人も見てきました。

意外と若い選手でも変形が認められる選手もいます。

最近はなるべく半月板は残すような手術が主流になってきているので、徐々に減っていくとは思いますが、半月板の重要性を実感します。

半月板はやはりクッションの役割があるということがわかります。

軟部組織の柔軟性低下

次に筋肉や靭帯、皮膚などの軟部組織の柔軟性低下による伸展制限です。

これは十分、改善が可能です。

膝を怪我した後や手術した後にひどく腫れた場合に、その腫れの残りが瘢痕組織いわゆるスカーティッシュとなって、膝の関節の動きを阻害しているこケースはよく見かけます。

あるいは手術した場合は術創部(皮膚を切開した痕)が癒着してしまう影響も大きいです。

膝を曲げ伸ばししているときに、どの組織の緊張が高いかというところをいつも触ったり、見たりしながら、私もアプローチしています。

緊張が高いところにアプローチすると伸展だけでなく、屈曲の制限も取れやすいです。

これは治療効果が現れやすいので、選手もアプローチ前後で改善具合を実感することができます。

関節内の遊び不足

また、構造物の変形があった場合でも、関節内の遊びを十分に出してあげることで、一時的に制限を改善できる場合もあります。

本来伸展していき、ぶつかるところが、関節内の遊び(余裕)を作ってあげることで、ぶつかりにくくなり、痛みが軽減されたり、可動域も多少良くなることがあります。

これはどちらかというと屈曲制限でその効果は実感しやすいです。

膝の伸展制限を改善する方法

スカーティッシュの除去

では、どのようにこの伸展制限を改善していくかというと、まずはスカーティッシュの除去から始めます。

これは自分でもできることがあります

もちろん、やってもらった方が効果は出やすいですが、まずは自分でできることをやりましょう。

具体的には膝の骨に沿って、関節部分にすき間を作るようにやや強めに撫でるようにしましょう。

骨の表面についた硬まりかけの粘土を剥がすようなイメージです。

お皿周りや大腿骨、脛骨、腓骨と丁寧に一つ一つ剥がしていくイメージで強めに撫でていきます。

やっていくと実感できると思いますが、その後動かしたときにスッキリ感が出てきます。

関節内の遊びを出す

次に、ちょっと難しめですが、関節内の遊びを出します。

関節とは、骨と骨のつなぎ目です。

関節には関節包と言って、関節を包む膜があり、その中で骨同士が前後、左右、回旋の動きの遊びがあります。

この遊びがあることで、骨同士が転がったり、滑ったりすることができ、正常な関節運動が起こるのです。

膝の場合だと、伸展するときに脛骨が前に移動し、最後少しだけ外旋(つま先が外を向く方向)します。

これを最終伸展域と言ったり、ホームスクリュームーブメントと言ったりします。

脛骨を前に出すのは膝を曲げた状態で膝の裏から前に押し出すようにしてあげるとよいでしょう。

そして膝を伸びるところまで伸ばした位置で脛骨を両手で持って、外方向にねじるようにします。

どちらもやり過ぎないようにしましょう。

そもそも関節の遊びはそこまで大きな運動範囲はありません。

あとは膝周りはできるだけリラックスした状態で行います。

膝周囲の軟部組織の柔軟性を出す

そして、一番やってほしいのは軟部組織の柔軟性を出すことです。

これにはいわゆるストレッチも入ります。

太ももの前や後ろ、ふくらはぎの筋肉のストレッチを十分しっかり行いましょう。

そして膝周りの筋肉や靭帯、皮膚をマッサージして、これも粘土を伸ばすように皮膚の上から伸ばしたい方向に押していきましょう。

筋膜リリースのような方法です。

可動域いっぱいのところで軟部組織がピンと張った状態でこれを行うとより効果的です。

筋肉も十分にストレッチして、マッサージもしっかりやったという場合、最後は膝を伸ばした状態で膝の上からおもりを置いてじわじわ伸ばすという方法もあります。

これはできれば専門家と相談しながら行う方がよいでしょう。

それをやってもよい状態かどうかを評価してもらいましょう。

もし炎症があるのにやってしまうと悪化する恐れもあります。

しかし、炎症もなく、関節包や靭帯の柔軟性低下が原因であれば、おもりを置く方法もありだと思います。

まとめ

いかがでしたか。

わかりにくい部分も多かったと思いますが、自分でできることはあります。

その上で専門家に見てもらうとより効果が出やすいと思いますので、全部人任せにせず、できることはいろいろとやってみましょう。

もちろん、私が担当することになった場合には全力でアプローチして、必ず来た時よりも良い状態でお帰しします。

よりよいコンディションで選手がプレーできるようなお手伝いをしていきます!

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