ハムストリングスはランニング中に遠心性収縮していない? | フットボールスマートアカデミー

ハムストリングスはランニング中に遠心性収縮していない?

ハムストリングスはスプリント中に肉離れすることが多いと言われています。

実際に、走っているときに急に太ももの裏を手で押さえて倒れこむ選手や足を引きずってしまう選手を目の当たりにしてきました。

スプリント中のどの時点が危ないかというと、足を前に振り出して地面に着く瞬間とその直前が一番危ないとされています。

図のように足を前に出したときにハムストリングスが強い収縮をするときです。

足を着く瞬間もしくはその直前が危ないとされている

なぜかというと、足を前に出すときにハムストリングスは伸びていきます。

ハムストリングスが伸びている最中から、足を地面に着く瞬間に膝から下が振り子のように慣性の力で前に振り出すのを止める必要があるため、ハムストリングスは伸びながら力を入れる必要性に迫られます。

これはいわゆる遠心性(エキセントリック)収縮と呼ばれ、一番力が発揮できる収縮でもあり、その分筋肉に一番負担のかかる収縮様式です。

普通は筋線維が縮む方向に筋全体が収縮します→求心性収縮

筋線維は縮むけど、筋全体の長さは変わらない→等尺性収縮

筋線維は縮むように作用するけど、筋全体が伸びていくもの→遠心性収縮

もともとの筋肉の弾性力(元に戻ろうとする力)と筋線維が縮もうとする力が合わさるので遠心性収縮が最も筋力が強く発揮できます。

身近な例でいうと、階段を下りる動作がそれです。

階段を降りようとして、膝を曲げるとき、太ももの前の筋肉に力が入っているにも関わらず、膝は曲がっていくので、筋は伸ばされていきます。

典型的な遠心性収縮です。

昔、階段をひたすら上る人とひたすら下る人のその後の筋肉痛の違いを比べた番組がありましたが、下る人に強い筋肉痛が出ていました。

遠心性収縮が筋肉にかかる負担が大きいことがわかります。

しかし、前置きが長くなってしまいましたが、今回たまたま見つけた海外の論文に、「高速ランニング中にハムストリングスは遠心性収縮しない」と主張するものを見つけました。

Is there really an eccentric action of the hamstrings during the swing phase of high-speed running? Part I: a critical review of the literature (Journal of sports sciences 35.23, 2017: 2313-2321)

https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/02640414.2016.1266018

フォワードスイング時にハムストリングスの上下の付着部の距離が離れるのは、そもそも膝を折りたたんだときに緩んだハムストリングスが元々の長さに戻るに過ぎず、筋肉がそれ以上に伸ばされながら収縮しているわけではないということです。

簡単に言えば、フォワードスイング(遊脚期)に起こっているのは等尺性収縮だ、ということです。

したがって、スプリントのためのハムストリングスのコンディショニングには、遠心性収縮より等尺性収縮を行った方がよいと勧めています。

正直、ハムストリングスの肉離れ予防には遠心性収縮しかない、と思っていたので、ある意味新鮮な内容です。

ただし、ハムストリングスの高速ランニング時のハムストリングスの収縮様式のことを説明したものであり、肉離れの予防にはやはり遠心性収縮が有効だということに変わりはありません。

Bourne, Matthew N., et al. “An evidence-based framework for strengthening exercises to prevent hamstring injury.” Sports Medicine 48.2 (2018): 251-267.

https://link.springer.com/article/10.1007/s40279-017-0796-x

コメント

タイトルとURLをコピーしました